いつも安全運転ご苦労様です。
冬が近づき、また、スタットレスタイヤに交換する時期がきました。
近年、大型車のタイヤが外れる事故が増加傾向にあります。
しかも、これからの11月から2月にかけて多く発生しており、タイヤの交換の1ヶ月後に多いそうです。
なぜ、タイヤが外れてしまうか、その原因とタイヤ脱着時の注意点について説明します。
目次
大型車のタイヤが脱落する原因とは
大型車のタイヤが外れる、原因として一番多いのは、ハブボルトが折れるのが原因です。
以前は日本工業規格のJIS方式では、中側のホイールはインナーナットで締め付けてあり、よく、ナットが緩みました。
平成21年(2009)にホイールの締め付け方がJIS方式から、ISO方式に変わり、一旦は減少傾向にありましたが、2014年ころから増加をたどっています。
ここに国交省のデーターがありますが、これを見るとISO方式のほうが多い件数になっています。
全日本トラック協会から引用
2015年はISO方式とJIS方式の事故件数はほぼ同じ割合でしたが、それ以降はISO方式の事故件数が増えています。
ISO方式の脱輪が増えている原因は、国土交通省においては「大型車の車輪脱落事故防止対策に係る連絡会」を立ち上げ検討中との事です。
しかし、全体的に大型車の車輪が外れる原因としては以下の様な結果が出ています。
全日本トラック協会から引用
主に、タイヤ交換時における作業不備がある様です。
同じ、タイヤ交換でも、冬タイヤから夏タイヤへ変えた後の事故件数は少く、冬タイヤに変えた時にほうが多い要因としては、雪が降ったりして、一斉に交換するため、慌てた作業による人的ミスが考えられます。
では、タイヤ交換時はどの様なことに注意したら良いのでしょうか。
タイヤ脱着時に注意することは
まず、大型車のタイヤ交換は何処で行うのでしょうか、
国交省の統計によると、大型車のタイヤ交換はタイヤ業者と整備工場が25%づつ、残りの50%は自社とあります。
タイヤ交換時、脱着には、社内の整備管理者が管理のもとで計画的に行わなければいけません。
一斉に交換するため、慌てた作業による人的ミスが多いので気をつけなければいけません。
そしてタイヤ交換の時には以下の7つの事に注意して行って下さい。
①JIS規格とISO規格のホイールを誤使用しない
②規格のナット、ボルトを使用する
③ハブとホイールの当たり面の錆びや泥を除去して密着を良くする
④ホイールに損傷が無いか確認する
⑤ハブボルトとナットのねじ部を清掃し、ピッチやボルトの伸び、亀裂がないか確認する
⑥油脂を塗る部分を確認する
⑦規定のトルクで確実に締め付ける
掘り下げて説明します。
①JIS規格とISO規格のホイールを誤使用しない
低床4軸車が使用する19.5インチのホイールは、ボルト穴数は同じですが、PCDの差が小さいため、誤装着に注意が必要です。
誤ってJIS方式ホイールを装着すると十分な締付け力が得られず、ホイール亀裂や車輪脱落事故の原因となります。
②規定のボルト、ナットを使用する
アルミホイール用とスチール用はハブボルト、インナーナット、アウターナットなど、長さや形状が異なります。
JIS規格の場合、ボルト、ナット類はALという文字が刻印された物を使用しなくてはいけません。
鉄→鉄の方が良いぞ!
③ハブとホイールの当たり面の錆びや泥を除去して密着を良くする
ホイールとハブが接地する部分は泥や錆びが発生しています。
この錆びや泥を取り除かないまま、ナットを閉め込んだ場合、ホイールとハブの接地部が上手く接地しておらず、走行中に挟まった泥、錆びが振動で取れてナットの閉め具合が緩んでしまいます。
ホイールを外した場合は必ず、ハブとホイールの両方の辺り面をワイヤーブラシでこする必要があります。
④ホイールに損傷が無いか確認する
ホイールも劣化して傷や割れが生じしてきます。
特に、ナットの締め付け部分の穴やデザイン穴の所から割れが生じてきます。
また、ハブが当たる部分に磨耗がある場合はホイールを交換する。
JIS規格のホイールはナットが当たるテーパーの部分が磨り減って変形したホイールは十分な締付け力が得られ無いので交換する。
⑤ハブボルトとナットのねじ部を清掃し、ピッチやボルトの伸び、亀裂がないか確認する
現時点で車検や点検時においてハブボルトの交換時期は定められていません。
しかし、ハブボルトも消耗してきます。
過度な締め付けにより、ピッチが痛んだり、伸びたりします。酷い場合は、ボルト自体が伸びて亀裂が入ったり、走行中に折れてしまいます。
ホイールを外した時、ボルトやナットのピッチを灯油などで洗い、簡単にナットが回る様にして下さいネ!
⑥油脂を塗る部分を確認する
ホイールを締め付ける段階において油脂を塗るところがあります。
理由としてねじ部の錆び防止もありますが、接地面の磨耗を防いだり、適切な締め付けトルクを得る為でもあります。
画像:日本自動車工業会
しかし、この油引には大事な注意事項があります。
通常、油引に用いられるのはエンジンオイルが良いとされていますが、ねじが緩まない時に使用する潤滑剤は使う事はNGです。また、モリブテン系も同じく使用してはいけません。
なぜなら、両者ともスベリが良すぎて閉め過ぎてしまうからです。
トルクレンチで締めていても、ねじ切れるまで締まってしまいます。もし、トルクが得られてもボルトが伸びたり、亀裂が入ってしまいます。
CRC潤滑剤塗ってハブボルトが伸びてしまった事
⑦規定のトルクで確実に締め付ける
JIS方式の場合は中側のホイールはインナーボルトで締めます。ISO方式の場合は、中、外両方のホイールを一つのナットで共締めします。
この時、中側のホイールが確実にハブに密着せず外側のホイールを付けてナットで締め付けてもその隙間の分だけ締め付けが緩くなってしまいます。
それを防止するには、「ISOホイールガイド」を用いて確実に取り付けます。また、このISOホイールガイドを使用すると、ボルト穴のセンターが出やすいメリットがあります。
ホイールをナットで締め付けるにはトルクレンチを使用しますが、締め付けトルクは550N/m~600/Nmとなっています。
ナットを締める際、いきなり閉め込むのでは無く、すべてのナットを軽く閉めこんだ後、対角線状に閉めていきます。
それにより、平均的に締め込む事ができます。
ナットの頭から飛び出しているボルトのピッチ部が不揃いなっていないかの確認も大事です。
タイヤ脱落を防ぐ方法とは
タイヤ交換後の不備がもし、起こっていた場合タイヤが外れてしまう前に予防する手立てがあります。
その通り、点検しかありません。
最近ではホイールナットマーカーなる物が出ていますが、たまに道路の脇に落ちています。
そして、一定走行後の増し締めです。
必ずトルクレンチを使って規定のトルクで閉めます。その時、トルクレンチのカチッと音がなるだけで良いので閉め過ぎに注意が必要です。
まとめ
少し長くなりましたが、それだけタイヤ交換には、人的ミスが多いと言う事です。
タイヤ業者や整備工場に交換してもらったから大丈夫とは限りません。また、運送会社が自社でタイヤ交換を行うところも多く、その場合、整備管理者が立会いの下で慌てず確実な作業を行わなければいけません。
そして日常点検にホイールボルトの緩みの点検項目があります。確実な点検をお願いしたいところです。
コメント
全部書いてると長くなっちゃうので、スタッドボルトだけ言わせてもらうと、締め過ぎで伸びてしまったり、ネジの損傷が有ったりしたことが折損の原因の一つとして挙げられて居ます。JIS方式の時はインナーナットの内側のネジ長さゆえんに、途中で引っ掛かって噛んじゃうと言う事案が多かったと思います。なので、脱着時のトラブルで脱落までには至っていない例が多いと。で、ISO方式はダブルのタイヤを1つのナットで締め付けるので、伸びる→細くなる→折損というパターンです。いずれも、ボルト方式の常として「なじみ」を見逃して緩んでしまったり、「緩むから締めれば良いのね」とばかり、締めすぎに至った例が多いと思慮されます。また、潤滑剤の使用は、シャシ(自動車工業会)では「塗れ」が大勢を占めますが、トレーラ(車体工業会)では「塗らないで」が多いです。どちらがどうとかは議論の的ですが、使っている車体のメーカ指示に従うのが宜しいと思いますので、一律どうだとは言えないのが現状です。