ついに解禁!「運行前自動点呼」の導入とそのリスクとは?

長らく待ち望まれていた「運行前自動点呼」が、いよいよ正式に解禁となりました。


一足早く業務後の自動点呼は制度化されていましたが、これで点呼の形が大きく前進することになります。

この制度の背景には、運送業界全体に広がる人手不足問題や、運行管理者の働き方改革があり、業界として避けては通れない課題に対する現実的な対応策でもあります。

しかし、便利さと効率の裏には、重大なリスクも潜んでいることをご存じでしょうか?


本記事では、運行前自動点呼の概要とその導入背景を解説した上で、導入時に注意すべきリスクと対策について現場目線で掘り下げていきます。

 


「運行前自動点呼」とは?

導入の背景と目的

そもそも運行前自動点呼とは、運行管理者が立ち会わずに、ドライバーが機器やシステムを使って自己申告形式で点呼を完了させる仕組みです。

従来は、対面やIT点呼により運行管理者が体調確認やアルコールチェックを実施していましたが、この自動点呼ではAIやセンサーを活用した支援機器を活用し、管理者の関与なしで実施可能になります。

導入にあたっては、国土交通省が定める一定の機能基準を満たす機器・システムの使用が必須です。

背景には業界を取り巻く深刻な事情が

  • 慢性的な運行管理者の人手不足

  • 長時間労働の是正と労務管理の見直し

  • 点呼記録のデジタル一元化による効率化

  • 「物流の2024年問題」への対応

これらの課題を背景に、自動化によって業務負担を軽減し、法令順守を維持したまま効率的な運行管理を目指すというのが本制度の目的です。


しかし… 自動点呼に潜む「3つのリスク」

制度としての整備が進む一方で、現場からは以下のような懸念の声が上がっています。

1. 健康状態の過信と虚偽申告の可能性

ドライバーが自ら健康状態を申告するため、「少しくらいの不調なら我慢して申告する」
といったケースが発生しやすくなります。

特に睡眠不足や体調不良は重大事故の引き金になるリスクがあるため、自己申告形式では不安が残るのが実情です。

2. 非対面による異変の見逃し

これまでの対面点呼では、管理者が顔色・声の調子・態度など非言語的なサインからドライバーの異常を察知してきました。
自動点呼ではこれが難しくなり、体調異変や飲酒の兆候を見逃す恐れが考えられます。

いくら技術が進歩しても、やはり「人の目・勘・経験」は軽視できないのが現実です。

3. システム障害や不正使用のリスク

機器やネットワークの通信エラー、端末の不具合が発生する可能性はゼロではありません。
また、他人のなりすまし点呼や、アルコール検知のごまかしなど、不正の温床にもなりかねません。

そのため、セキュリティ対策や本人認証機能の強化、運用ルールの整備は不可欠です。


企業が今すぐ取るべき対応策

● ハイブリッド運用の推奨

完全な自動化ではなく、「週1回以上の対面点呼」をルール化し、
人によるチェックとシステムによる管理を両立させるのが安全策として有効です。

● AI異常検知の活用

AIによる顔認証や音声分析で異常行動や体調不良の兆候を察知できる技術も進んでいます。
ただし、過信は禁物であり、最終的な判断は人の目で行うことが肝心です。

● 社員教育と意識の徹底

ドライバーには「虚偽申告が命にかかわる」という意識を持ってもらい、
自己申告の重要性と責任感の醸成を図ることが必要です。


まとめ:自動化は手段、安全は目的

運行前自動点呼は、記録管理の効率化や人手不足対策として非常に効果的な手段です。
しかし、安全という目的を見失ってしまっては本末転倒です。

個人的な見解ですが、やはり運行管理者による対面点呼が最も信頼できると感じます。
とはいえ、点呼不備は運送業界における法令違反の中でもワースト1とされており、
「何もやらないよりは自動点呼の方がマシ」といった現場の事情も理解できます。

最後に忘れてはならないのは、
万が一、自動点呼を通過したドライバーが体調不良で事故を起こしたとしても、責任はシステムではなく会社にあるという現実です。

点呼は単なる形式ではなく、「命を守る最後の砦」です。
テクノロジーを正しく活用し、安全と効率の両立を目指すことが今後の課題となるでしょう。

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