
令和4年4月1日から事故報告書の届け出の内容が変わります。

運送事業者は一旦、重大事故を起こすと管轄する運輸支局をとおして国土交通大臣あてに事故報告書を提出しなければいけません。

では、事故報告書が必要となる事故とはもう一度おさらいしてみましょう。
事故報告書が必要となるケースとは
事故報告書が必要となるケースは「旅客」「貨物」合わせてこれだけあります。
- 自動車が転覆し、転落し、火災を起こし、又は鉄道車両等と衝突し、若しくは接触したもの
- 10台以上の自動車の衝突又は接触を生じたもの
- 死者又は重傷者を生じたもの
- 10人以上の負傷者を生じたもの
- 自動車に積載された危険物等が全部若しくは一部が飛散、又は漏洩したもの
- 自動車に積載されたコンテナが落下したもの
- 操縦装置又は乗降口の扉を開閉する装置の操作不適切により、旅客に傷害が生じたもの
- 酒気帯び運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転、麻薬等運転を伴うもの
- 運転者の疾病により、事業用自動車の運転を継続することができなくなったもの
- 救護義務違反があったもの
- 自動車の装置の故障により自動車の運行ができなくなったもの
- 車輪の脱落、被牽引自動車の分離を生じたもの(故障によるもの)
- 橋脚、架線その他鉄道施設を損傷し、3時間以上鉄道車両の運転を休止させたもの
- 高速自動車国道又は自動車専用道路を、3時間以上通行止めにさせたもの
- 国土交通大臣が特に必要と認めたもの

これに当てはまる事故が生じた場合、30日以内に自動車事故報告書3通を運輸支局を経由して国土交通大臣に提出しなければなりません。
自動車事故に係る報告書等の書式例(新潟運輸支局)
トラック手引き

今回、改正されたことは
改正と言うか、本来、事故報告書には9番の「運転者の疾病により、事業用自動車の運転を継続することができなくなったもの」とありますが、「睡眠時無呼吸症候群」の疑いがあるものの事故については報告がなされていないのが現状です。
よって、睡眠時無呼吸症候群が要因と思われる「居眠り運転」「漫然運転」による事故を起こした事業者は事故報告書の提出が必要となります。
以前は、居眠り運転、漫然運転から事故を起こした場合、事故を起こしたドライバーの責任が多くとらわれました。
しかし、何故、居眠り運転になってしまったか、その裏には疲労の蓄積や、疾病によるものも少なくありません。
その中で、疾病、すなわち、無呼吸症候群が原因とされる事故は、正常者と比べて高い割合を占めています。
また、睡眠中なので自分が無呼吸症候群だと気がつきにくいのも事実です。

睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、別名SAS(Sleep Apnea Syndrome)とも言います。
睡眠時、気道がふさがれ呼吸が出来なくなり、無呼吸状態が一晩に30回以上、もしくは1時間あたり5回以上あれば、睡眠時無呼吸となります。
10秒以上の気道の空気の流れが止まった状態になり、心臓への負担がかかります。

無呼吸状態になると心臓に負担がかかるだけでは無く、睡眠が浅くなり、その結果、強い眠気や倦怠感、集中力低下などが引き起こされ、日中の様々な活動に影響を及ぼします。
要するに、運転に影響がでてきます。
正直なところ私もSASの中等症患者です。
運転を始めて30分もするとあくびが出てきます。
あるドライバーに聞いたところ、運転中、突然意識が無くなった人もいました。幸い、対向のトラックのミラーの接触だけで済みましたが、それ以来治療を始めたそうです。
私も会社で行ったスクリーニング検査でSAS疑いが発覚したので病院で検査した後、治療をしています。

違反した場合は
もし、「睡眠時無呼吸症候群」の疑いがあるものの、事故については報告がなされていない場合、要するに重大事故を起こしたのにも関わらず事故報告書が出ていない場合は警告及び、10日車の停止処分が下されます。
警察から運輸支局に事故の連絡が入る訳ではありませんが、行政処分が怖いからと言って届出をしていないと隠ぺいとなり更なる処分が科せられることもあります。
また、Gマーク申請においても「事故や違反の状況についての項目」では該当した場合は書類提出が必衰となります。

まとめ
日本、全人口の中で無呼吸症候群の疑いがある人は2%以上と言われています。
そして、無呼吸症候群の人が事故を起す割合は、そうでない人と比べると7倍多いとされています。
最近では、SASスクリーニング検査を事業所内で実施する会社も増えてきたとは言え、トラック関係は4割程度となっています。
トラック協会ではSASスクリーニング検査への助成金活用制度が設けられています。
SASは自分では分からないケースが多く、健康診断と同様に自社の全ドライバーに受診させ、疑いがある者は精密検査を受けさせるべきです。
全国トラック協会「SAS精密検査・治療のそこが知りたい!Q&A」