国交省は20020年「標準的運賃」を提示しました。
これに対して、
実際、これって意味あるの?
荷主に対しての説得力にかける、いっそ、名前くらい「基本運賃」か、せめて「標準運賃」くらいにして欲しかった。
いやいや、名前だけでは無く、内容も上限、下限額が設定されると良かったかも、
旅客は運賃の下限が決まっているのにね!
こんな声が聞かれます。
たしかに旅客自動車運送事業は運賃の下限を下回ると「届出運賃違反」で行政違反になります。
それに引き換え、貨物には最低運賃の設定が無いことが疑問です。
でも、せっかく国交省で提示された「標準的運賃」なので利用しない手はありません。
現在の運賃設定はどうなっている?
昔は運賃タリフというものがあった。
国土交通省はこの、タリフを1999年(平成11年)を最後に現在に至っています。
ってことは、20年以上は運賃が変わっていないことです。
原因として、もともと守られないタリフなら「あなた方が自分で運賃を決めて下さい」ってなことになりこの運賃タフリはなくなり、運賃は各社の届出制になった訳です。
この、運賃タリフが守られない原因として、規制緩和が大きく影響しています。
規制緩和によって運送業界への新規参入が増え、値下げ合戦が始まったのは言う間でもありません。
では、現在において各社、運賃設定はどうやって決めているのでしょうか、
運賃を設定するには、原価計算をして運賃を決めることが基本ですが、正直、原価計算をだして運賃を決めている運送会社はどれだけあるかです。
この、原価計算は、燃料費、人件費、車両の原価償却など等、いろいろな経費を算出しなければなら無く、結構面倒な作業です。
運送業界は、車両が30台以下の零細企業が8割を占めています。荷主に対する交渉力が弱い立場にあり、運賃は荷主任せのところが多いのです。
何故、荷主任せになってしまうのか、
それは、この業界の仕組みに原因があります。
本来の元の荷主があり、元請け、下請け、孫請け・・・となっており、元受から順番に運賃が流れていきます。
その際、玉ねぎがはがされる様に運賃が削られていきます。
下にいくほど安い運賃になってしまう訳です。
なぜ、標準的運賃が必要か
では、ここにきて国交省は何故、「標準的な運賃」を出してきたのでしょうか、
それには、運送業界が抱える問題があります。
今は、コロナ禍の影響もあり、宅配業などの一部の部門しか労働力不足、すなわち働き手不足になっていないもの、長期的にみると慢性的な人手出不足が発生しています。
それに追い討ちをかけるかたちでドライバーの高齢化が進んでいます。
つまり、若い年代層がこの、運送業界に入ってこないのが現状です。
これでは、この先、物流自体がなりたたない時代が遅かれ、早やかれやってくる可能性があります。
2015年に大手広告会社で、長時間労働により、自ら命を絶った事件がありました。
1日、20時間も会社で仕事をしていたそうです。
同じく、運送業界でも長時間労働が問題となっています。
これには、荷待ち時間などの問題もありますが、労働時間が長いわりには賃金が安い、これでは若い世代に「トラックドライバーになってくれ」と言っても見向きもされない業種になっても不思議がありません。
よく、「トラック運転手は昔は稼げた」と聞きますが、仕事がきつくても給料が良ければ我慢は出来ます。しかし、荷待ちが多くて労働時間が長い、そのわりに給料が安い、これでは話になりません。
過労死ラインが見直され、過度な長時間労働や残業・業務における過重な負荷を軽減させる目的で「働き化改革」が2019年に発表されました。
目的は「働く人々すべての労働環境を大きく見直す取り組み」とあり、これは、会社規模や従業員の数によって指摘される問題ではなく、中小企業や個人事業などすべての企業に当てはまるということです。
働き化改革の内容はここでは省略させてもらいますが、実施は大手企業は、2019年から始まっています。
対する我が、運送業界は2024年までの猶予期間が設けられています。
まだ、2年あるでは無く、あと2年しかないです。
今から準備、とくに運賃交渉を始めていかないと手遅れになってしまいます。
働き化改革に向けて運賃交渉をしないと会社の継続は無いかも
この問題を打破するには、まず、運賃を上げることが先決であり、荷主に対して交渉力が弱い運送会社が運賃交渉をするための材料としての目的で標準的運賃が作られました。
この、標準的運賃を見たとき、はっきり言って「こんなにもらえたら・・・」っと思ってしまいました。
標準的運賃が100としたら、現状の運賃は半分か、55%くらいです。
まあ、それだけ安い運賃でおこなっているってことでしょうか、
運送事業者の多くは、この、コロナ禍の時期に運賃の値上げ交渉なんか無理、
今、下手に値上げを要求したら「運送会社は他にいくらでもあるよ!」で終わりだ、
もう少し様子をみてから動いたほうがいい、出る釘は打たれる、
正直、こんなことを思っている運送会社がほとんどです。
たしかに運送会社は星の数ほどあるかもしれません。
私は今まで、他より低い運賃で参入して事業を拡大した運送会社を沢山見てきました。
車両台数も一気に増え、潤っているように見えましたが実際は経営が「火の車状態」で経営者も自らハンドルを握っている状態で、あげくの果ては廃業していきました。
運送業は薄利多売ではこれからはやっていけないのです。
この、標準的運賃を荷主に対して要求するには実際問題、勇気がいることです。
何故なら、現状の運賃と比べると、倍ちかい運賃設定になっているからです。
しかし、ここで15%や20%いや、とりあえず燃料サーチャージ分だけ荷主に頼んでみようと思われている事業主も少なくないと思います。
でも、ここで○○%値上げをしてもらっても2年先にはまた運賃交渉を余儀なくされること間違い無いのです。
だったら、満額要求し、たとえ要求が満額でなくても次回に同じ条件で出したほうがやり易いのでは無いでしょうか。
標準的運賃票の利用仕方
統計によると標準的な運賃に基づく、運賃変更の届け出を出している運送事業者は2021年10月現在で3割強と言われています。
この数の運送事業者がどれだけ荷主に対して標準的運賃を元に運賃交渉をしたのでしょうか、それどころかか、まだ運賃変更の届け出をしていない運送事業者は沢山いるということです。
運賃変更届は、全日本トラック協会の届出様式をクリックしてください。
同じ概要欄に、計算シート・シュミレーターがあるので一度自社の現在の運賃を比べてみるのもありです。
実際、私も標準的運賃計算シートを使ってみました。
赤枠の部分だけ入力すると自動で運賃が出てきます。
ただ、距離制運賃と時間制運賃は入力の仕方で大きな差がでてきます。
これは、多分、帰り便が有、無しでの考え方で違ってくると思われます。
ここにYouTubeに説明の動画を貼っておくので良かったら見て下さい。
最後に
いかがでしたか、
積み地から、納品先までの距離はデジタコなら表示されていますし、もし、デジタコで無くてもグーグルで調べることも可能です。
一度、シュミレーターで輸送距離を入力するだけで「標準的運賃」が表示されます。
その金額と今の運賃を比べてみてどうでしょうか、
「そんなに貰えたら・・・」っと思われるかもしれませんが、そんなに貰えたらでは無く、そんなに貰っていなかったのが正しいのかもしれません。
2年先に迫った運送業界の「働き化改革」、この問題をクリアするにはまず、運賃交渉しかありません。
たしかに「コロナ禍なのに運賃交渉など無理!」と思われるかもしれませんが、今から準備していかないと間に合わなくなります。