ここでは、トラックドライバーの基本中の基本、プロドライバーとは、どうあるべきかを学ぶ必要があります。
今では物流の9割以上を担うのがトラック輸送です。我々が物流の主役であり、日本の経済を支えていると言っても過言ではありません。
しかし、一旦、事故などを起してしまうとその車体の大きさや重量の重さにより重大事故に繋がり、社会的な影響も大きいのも事実です。
ドライバーに対して法令で定まられている12項目を教育することは管理者にとっては、骨の折れる作業です。
この資料を安全教育に役立てていただければ幸いかと思います。
目次
第1章 トラック輸送の役割と使命
何故、トラック輸送が物流の大半を担っているか分かりますか?
まあ、当たって無いとは言いきれませんが、それは、第一に利便性です。
ドアツー・ドアっと言って、積込み先から、届け先まで積み替える必要が無いことです。
鉄道や、船舶などは大量に運ぶことが出来る代わりに積み替えが必要としたり、小回りが利いた輸送が出来ず、時間もかかってしまいます。
なので、依頼してから短時間で届けることが出来るトラック輸送が重要視されています。しかし、利便性の裏には、過度な労働環境の元で働いているトラックドライバーも少なくありません。
1 トラック輸送の社会的重要性
もし、トラックが止まったらどうなるでしょうか、
トラック輸送が止った場合、一般雑貨から食品などが運べなくなり、極端ですが、日本経済が崩壊してしまいます。
下に「近畿トラック協会」と「愛知県トラック協会」のCMがあるので観てみましょう。
最近は地方のトラック協会もこういったCMに力を入れています。
で、トラック輸送は日本経済には大事な輸送手段ですが今一番困った問題があります。
そうです。人材不足と高齢化です。
現在、トラックドライバーの平均年齢は厚生労働省の令和2年のデータによると、全産業の就労者の平均年齢が43.2歳なのに対して、大型トラックの運転手は49.4歳とプラス6.2歳もの開きがあります。
昔はトラックドライバーは、なりたい職業の中で結構、上の順位にいたけど、今ではあまり人気の無い職業になっています。
2 トラック輸送の現状
荷物を運ぶことで運賃をもらえることが出来る車には、緑ナンバーが付いています。
白いナンバープレートが付いているトラックは自家用といって、他社や他人の荷物を運んで運賃をもらうことはできません。
もし、他人の荷物を運んで対価をもらうと、
ですね、
無許可営業で罰せられます。
中にはバイク便など例外もあります。
国内で登録されているトラックは、約、800万台ですが、そのうちの緑ナンバートラックは、140万台です。
以外に少ないんだ。
でも輸送量は、全体の7割を緑ナンバートラックが運んでいます。
それだけ多忙で動いているってことです。
その緑ナンバーを保有する運送事業者ですが、令和3年で、63.251者ですがその内、車両台数が20両以下の事業者が全体の8割を占めています。
3 災害時の緊急物資輸送における役割
災害などが発生した場合、トラック輸送が業界をあげ緊急物資を運びます。
東日本大災害時には、1万台を超えるトラックが全国から被災地に物資を運びました。
私も阪神淡路大震災の時には、水戸市から仮設住宅を積んで神戸の灘区まで走ったことがあります。
その時には、写真のような横断幕は無かったですが、フロントガラスに緊急物資輸送中のプレートを付けて走りました。
また、運ぶだけで無く、各地から届けられた物資は一旦は大規模な集積場所に集められます。それを仕分けや再配送などの手配も物流専門のスキルが大きく役立っています。
被災地支援のトラックたち より
私はこの歌を聴くと涙が出てきます。
4 トラック事故の社会的影響
こんなに役立っているトラックですが、一旦事故を起すとイメージダウンにつながります。
それは事故を起した本人、運送会社はもとより、運送業界全体への社会的影響が大きく、職業としてトラックを運転する者はプロとしての意識と絶対に事故を起さないという信念を持たなければいけません。
事業用自動車の中でバス、タクシーと比べてもトラックによる死亡事故が多く発生しています。
1万台あたりの死者数でもトラックが多い統計があります。これは、車体が大きく、重量もあるので一旦事故を起すと死亡事故につながりやすいってことです。
事業用トラックの事故の多くは、追突事故と交差点での事故が多い割合にあります。その中でも重大事故につながりやすいのが追突事故です。その7割が高速道路上で起きています。
事故の要因として、居眠り運転や、漫然運転などがあげられます。
とくに、渋滞の最後尾に高速で追突し、大事故のニュースも流れます。
ANNニュースより (※事故衝撃映像流れます。)
交差点事故においては、死亡事故が起こりやすい傾向にあり、追突事故の約、5倍の死亡事故件数となっています。
交差点の事故の特徴は、トラック対歩行者と自転車が多く、左折時には、対自転車、右折時には、対歩行者となっています。どちらも巻き込みによります。
要因はトラック特有の死角が招いていると思われます。
たしかに、自ら死角をつくっています。
大型車の死角と言えば、こんな悲惨な事故も最近ありました。
Youtube ANNニュースより
そして、死亡事故が起きる時間帯は、深夜から、明け方にかけて多く、明け方の4時から5時ごろが多く、大型車は、2時から3時、中型車は、4時から5時がもっとも多く発生しています。
たしかに夜間は交通量が昼間の時間帯と比べると少なくて走りやすいかも知れません。が、その故、速度も上がりやすく、運転も漫然になります。さらに眠気も加わり最悪は、居眠り運転につながりやすい傾向になります。
そして、夜間は視野が狭くなるので歩行者や、停止車両の発見が遅れてしまうことも忘れてはいけません。
その為には、ライトはハイビーム(上向き)を心がける必要があります。
5 環境への配慮
今では地球温暖化とされるCO2の削減は世界中の課題です。
ましてや、トラックなどの大型車両は排気量も大きいのでエコ運転に心がけなければなりません。
まず、
- 無駄なアイドリングを控える
- 空ぶかしをしない
- 急発進をしない
など、穏やかな運転はエコ運転につながり、安全運転にも効果があります。
環境問題といえばゴミの問題も有ります。
よく、パーキングの脇にコンビニ袋に入ったゴミが捨てられいますが、すべてとは言いませんがトラックドライバーによるポイ捨てが目立ちます。
たしかに最近ではコンビニもゴミ箱を店内においてあるのでドライバーだけの問題ではなさそうですが・・・
でもポイ捨ては違法投棄で罰せられます。
第2章 トラックドライバーの基本
ここでは、ベテランドライバーの人は「そんなの当たり前」と思われるかもしれませんが初心に帰って学んで下さい。
1 トラックドライバーとしての心構え
皆さんは挨拶が出来ますか?
よく、「自分は他人と喋ったりするのが苦手だから運転手になったんだ」と言われる人がいますが、せめて挨拶だけは最低限必要です。
たしかに積込み先、納品先の人に挨拶しても返事は帰ってくる確実はきわめて少ないのも事実ですが、大きな声ではっきりと挨拶すればそのうち向こうも挨拶を返してくれるかも知れません。
皆さんは会社の顔ですから、見ている人は見ています。
ところで4Sって知っていますか、
- 整理
- 整頓
- 清掃
- 清潔
ですが、この4Sも安全運転、いや、4Sが守られていなくて事故につながることがあります。
我が社で以前実際、起きた事故ですが、車内が整理、整頓がなされていなくて追突事故を起したケースがあります。
原因は、散乱した地図に気をとられ右折の車に追突してしまいました。
幸い、重大事故にはなりませんでしたが普段から車内を整理、整頓していれば事故にならなかったかも知れません。
そして、論外ですが、フロントパネルにカバーや、物などを置いている人がいますが、夜間などは反射して見にくいのでフロントガラス前は物を置かないほうがベストです。
普段からフロントガラスは外も中も綺麗にしておかなくてはいけません。
きれいな車は運転していても気持ちが良いものです心掛けてください。
2 安全・環境や輸送品質に配慮した運転に対する心構え
車の運転は楽しいですか?
普段、何気なしに運転していますが、運転の基本動作はまず、状況を認知することから始まります。
認知した状況に対して的確な判断、そしてハンドルやアクセル、ブレーキといった操作の繰り返しです。
一見、馴れてしまうと楽そうに思いますが、運転中は同じ姿勢で緊張の連続になります。もし、体調不良で乗務したら事故につながるかも知れないのです。
トラックドライバーは何かと生活が不規則になりがちです。日ごろから出来るだけ規則正しい生活を送れるような環境作りが必要です。
その為には家族の協力も大事です。
そうですね!
我が社では、面接の時、家族の理解を得られたかがまず、最初に確認します。
これから先は交通ルールについて説明します。
トラックドライバーなど、職業運転者は免許証が無くては続けることは出来ません。なので日ごろから交通法規を守ることが大事です。
ですが、以外にトラックドライバーの飲酒による事故も少なく無いのも事実です。
【調査報道】トラック運転手 飲酒運転の実態【Nスタより】
これでは、アルコールチェックどころか、点呼自体も危ぶまれます。
出先の飲酒はもちろんですが、気をつけなければいけないのは前日に呑んだアルコールです。
飲酒の量にもよりますが、前日に呑んでから、アルコールが体内から抜けるのに時間がかかります。完全に抜けきっていない場合は、点呼時のアルコールチェックにひっかかり乗務できません。
飲酒運転はプロドライバー以前の問題ですね。
では、トラックの特性に対する運転で気をつけることについて説明します。
先に言いたいのは、トラックは荷物を積んだ状態と空車時の状態では制動が変わります。
特に、荷物を積んだ状態でブレーキを掛けた場合、空車時と比べるとかなり開きがあり、十分な車間距離をとる必要があります。
トラックは運転席が高いので前車との車間距離が狭まる傾向にあるので意識して車間をとる必要があります。
また、信号待ちで止った場合、車間を詰めすぎてしまうと前車が乗用車などだと威圧感を与えてしまいます。
そしてトラックは車体の大きさから回りに対して気をつけることがあります。
道路脇の歩行者や、自転車などには十分間隔を空ける必要があり、トラックの通過時の風圧で自転車が転倒した事例もあります。
ですね!
あと、合流場所などでトラックが止っていると見にくくて合流しにくい場合もあるから注意を払う必要があります。
殆どのトラックは会社名やロゴが入っているので目立ちやすく、動く看板みたいなものです。目にあまる行為をすると会社のイメージダウンにもつながります。
少し前にこんな事故もありました。
時事通信映像センターより
この事故でトラックのドライバーは死亡、電車の乗客30人以上がケガをしました。
このように車体の大きいトラックが踏切内で列車と衝突すると重大事故になります。一旦停止はもとより、踏切り先に自車のスペースがあるかの確認が必要です。踏切りの先が渋滞などで車体が踏切内に残るような場合は決して侵入してはいけません。
もし、踏切内にとりこになった場合は、
「もし車が踏切り内に閉じ込められたら?」JR北海道公式より
まずは落ち着くことです。
ところで、大型車の一般道路の速度は?
以前は大型車は50km/hでしたが、現在は、速度制限が無いところでは車種問わず60km/hです。
しかし、一般道では速度制限がかけられているところが多く、速度50km規制がかかっていても80km/hぐらいで走っているトラックも見かけます。
では高速道路の制限速度は?
そうです。大型車やトレーラーも80km/hですが、ややこしいのは、中型トラックです。
最大積載量が5トン未満、車両重量が8トン未満のトラックは高速道路においては、速度が100kmとなっています。
ついでにここで中型免許で運転できる車種を見てみましょう。
免許の種類 | 普通免許 | 準中型免許 | 中型免許 | 大型免許 |
受験資格 | 18歳以上 | 18歳以上 | 20歳以上(普通免許保有2年以上) | 21歳以上(普通免許等保有3年以上) |
車両総重量 | 3.5トン未満 | 3.5トン以上 7.5トン未満 |
7.5トン以上 11.0トン未満 |
11.0トン以上 |
最大積載量 | 2.0トン未満 | 2.0トン以上 4.5トン未満 |
4.5トン以上 6.5トン未満 |
6.5トン以上 |
乗車定員 | 10人以下 | 10人以下 | 11人以上、29人以下 | 30人以上 |
高速道路速度制限 | 100km/h | 80km/h・100km/h |
80km/h・100km/h |
80km/h |
高速道路においては他にも気をつけなければいけない部分があります。
高速道路では駐停車禁止です。通常の出発前点検はもとより、燃料の残量の確認や、タイヤの空気圧、溝の深さにも気をつけなければいけません。
速度が速いことにより、タイヤの空気圧が低いと表面温度が上昇してバーストにもなりかねます。(スタンディング・ウェーブ現象)
また、溝が少ないと、路面とタイヤの間の水が履け切れずタイヤが浮いた状態(ハイドロプレーニング現象)が起こり、スリップしやすくなり大変危険です。
また、落下物や、故障車などの連絡は、道路緊急ダイヤル『#9910』へお願いします。
高速道路で私が普段感じることは、車間距離が少ない車両が目立つことと、追い越した車両が車間が少ないにも関わらず追い越し車線から、本線に車線変更してくる車両が多いことです。
大型車は、スピードリミッターが効いてしまうので追い越す車両との速度差が無いので必然的になってしまうのも理解できますが、あまりギリギリで本線に入ってきても追い越された側は気分が良い気がしません。
まあ、それもありますが、事業トラックは見本となる運転を心がけたいものです。
また、記憶に新しいところでこんな事故がありました。
これは観光バスの事故ですが、トラックも基本は同じなので取上げてみました。
静岡朝日テレビ より
この事故は、下り坂のフットブレーキの使いすぎが要因とされています。
まず、フットブレーキを多用するとフェード現象といって、ブレーキライニングの加熱により、ドラムとライニングとの摩擦力が低下し、制動力が落ちてしまうがこと、もう一つは、ブレーキシステムがエアー式の場合、ブレーキを踏むごとにタンク内のエアーが減少し、多用すればエアーが無くなりいずれはブレーキが効かなくなってしまいます。
今回の事故はどちらが原因かは定かではありませんが、フットブレーキの使いすぎには十分気をつけなければいけません。
まず、低速ギヤにして、排気ブレーキや、リターダーを活用してやなべくフットブレーキを酷使しない運転を心がける必要があります。
バスは車両重量が16トンくらいですが、大型車は荷物を満載すると25トンにもなるのでなおさらです。
まとめ
いかがでしたか、長時間にわたりお疲れ様でした。
プロドライバーとしての心構えは理解して頂けたでしょうか、運転を職業としている人はプロです。職業ドライバーになって日が浅い人は運転の技術はさておき、運転マナーや、モラルは日が浅い長いは関係ありません。
トラックは、乗り手により左右され、良いイメージや、悪いイメージになります。プロドライバーは、常に他車の手本となる運転、行動を心がけ、業界のイメージアップに繋げたいものです。