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トラック運転手の「付帯作業料」とは
荷物を積み込んで、下ろして、ときには仕分けや検品まで手伝う。
こうした「運送以外の作業」を、業界では 付帯作業(または荷役作業) と呼びます。
そして、この付帯作業は本来、運賃とは別に請求できるものなんです。
■ 現場の実情:付帯作業料は「運賃込み」がまだ多い
しかし現場の実情を見ると、まだまだ“運賃込み”が当たり前。
全日本トラック協会の調査でも、付帯作業料を別建てで請求できている事業者は全体の3割ほどしかありません。
残りの7割は、
それに他のところも込みでやっているからなあ~
といった理由で、サービス扱いになっているのが現状です。
以前から運賃にすべてを詰め込む形が続いてきたため、結果として 運転手の手当てや賃金が上がらない構造 になっている。
ここが大きな問題なんです。
■ 付帯作業料の目安
実際に別建てで請求している会社では、次のような金額が多く見られます。(一般例)
| 作業内容 | 相場の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 手積み・手降ろし | 1回 1,000~3,000円 | 荷姿・量で変動 |
| フォークリフト作業 | 1回 2,000~5,000円 | 荷主・自社リフトによる |
| 荷待ち時間 | 30分~1時間あたり 1,000~2,000円 | 荷待ち料として請求可 |
| パレット回収 | 1回 1,000円前後 | 戻り荷扱いでも加算可 |
ざっくり言えば、運賃総額の5〜10%程度が付帯作業料として妥当な範囲です。
国の基準と照らしても、この程度が現実的なところでしょう。
■ どこまでが「運転者の本来作業」なのか
ここが一番ややこしいところです。
荷役作業の中でも、どこまでが運転手の“仕事の範囲”なのか――。
その線引きがあいまいなまま、現場では“やるのが当たり前”になっていることが多いんです。
◎ 運転者が本来行う作業(運送に付随する範囲)
- 荷物の 固縛(ロープ掛け、ラッシングなど)
- 積載状態の確認(重量・バランス)
- 輸送中の安全確保に関わる点検
- 受け渡しの確認や伝票処理
これらは「安全運行」に直結する作業です。
そのため、運転者が行うのが当然とされています。
いわば“運送の一部”と考えるのが正しいでしょう。
◎ 付帯作業として別料金にすべき作業
一方で、以下のような作業は 運転者の本来業務ではなく、本来は荷主側で負担すべきものです。
- 手積み・手降ろし
- 荷物の仕分け、検品、ラベル貼り
- 荷待ち・立ち会い・順番待ち
- 荷役補助員の手配
- パレット交換・返却
- フォークリフト・クレーン作業
これらは「輸送」ではなく「構内作業」の範囲です。
運転手がやるのは“好意”であって“義務”ではありません。
したがって、付帯作業料として請求するのが正しい形なんです。
💬 【現場の声】
「手積み・手降ろしを1日何回もやるのに、全部込み運賃。体も時間も持たない。」こうした声は、どこの現場でもよく聞かれます。
けれど、運送会社側が“請求の根拠”を出せば、理解してもらえるケースも増えています。
まずは“言葉”として請求書に載せること。それが一歩目です。
■ 「サービス精神」がタダ働きを生んでいる
多くの運転手が、「荷主が見ているからやらないと」「次も仕事をもらえなくなるかも」と思って動いてしまう。
その気持ちは痛いほど分かります。
ですが、その“サービス精神”が積み重なって、
結果的に 時間外労働がタダになる 構造を生んでいるのです。
荷待ち1時間、積み込み1時間。
それが毎日続けば、月に20〜30時間分の無償労働になります。
その分を運賃に上乗せできれば、ドライバーの手当てに回せるはずなんです。
■ 国の方針も「運賃と作業料の分離」へ
国交省の「標準的な運賃」では、
- 荷待ち料:30分 1,000円
- 荷役作業料:1回 2,500円
といった明確な金額が示されています。
つまり、制度上も 「別建て請求が正しい」 という立場です。
運送業者が自社の見積もりや請求書にこれを反映すれば、
ドライバーの作業時間を“見える化”することができます。
2024年以降、物流業界は 「見える化」と「分離請求」 がキーワードになるでしょう。
■ まとめ:運転手の作業に正当な対価を
トラック運転手の仕事は、走ることだけではありません。
積み込みの工夫や固縛の技術、荷主との調整力――
そのすべてがプロの仕事です。
だからこそ、「運送以外の作業」には正当な対価を。
それを請求できる環境を、業界全体で整えていく必要があります。
付帯作業料を別建てにすることは、
単なるお金の話ではなく、働く人の時間と技術を守る仕組みなんです。
正しく見積もり、正しく請求する!
それがこれからの運送業を守る道です。
