

運送業界では、「なかなか運賃が上がらない」「ドライバーの給料が安い」といった声がよく聞かれます。
その大きな原因のひとつが、多重下請け構造にあると言われています。
この記事では、
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多重下請けとは何か
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なぜそのような構造になっているのか
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問題点や法的な制限
などについて、わかりやすく解説します。
目次
そもそも、多重下請けとは?
「多重下請け」とは、荷主(荷物を出す会社)から依頼を受けた元請会社が、自分では運ばずに他の運送会社に再委託することです。さらに、その再委託された会社がまた別の会社に委託する…というように、2次・3次と下請けが重なる構造のことを言います。
たとえばこんな流れです。
荷主 → 元請けA社 → 下請けB社 → 孫請けC社(実際にトラックを走らせる会社)
このように、荷物を実際に運ぶ会社に届くころには、運賃が何重にもマージンで引かれてしまい、残る金額は少なくなってしまうのです。



なぜ多重下請け構造になるのか?
では、なぜこのような構造になるのでしょうか?理由は主に次の3つです。
✅1. 荷主が元請としか契約しない
大手の荷主は、信頼できる大きな会社(元請)としか直接契約しないことが多いです。
そのため、元請が窓口となって仕事を引き受け、実際の運送は別会社に任せる流れが生まれます。


✅2. 繁忙期や突発的な依頼への対応
元請会社には限られた車両しかなく、急な依頼や繁忙期には自社だけでは回せないことがあります。そうなると、信頼している下請けや孫請けに協力を求めることになります。
✅3. 運送業は参入障壁が低い
トラックと運転免許があれば、比較的簡単に始められるのが運送業です。
小さな会社は、自分たちで仕事を取るよりも、元請や仲間内から回してもらう方が早いと考えることもあり、下請けの仕組みが成り立ちやすくなります。

多重下請け構造の問題点
このような多重下請け構造には、次のような大きな問題があります。
●✅ 実際に運ぶ会社に十分な運賃が届かない
下請けに回るたびに「紹介料」「中間マージン」として運賃が引かれていきます。
その結果、最終的に運行する会社には、ギリギリの運賃しか残らず、ドライバーの給料も上がりません。
● ✅安全投資や教育にお金が使えない
運賃が安いため、会社としてもトラックの整備やドライバーの教育、安全対策にかけられるお金が減ります。
それが事故やトラブルの原因になることもあります。
● ✅責任の所在があいまいになる
何かトラブルがあった時、「元請」「下請」「孫請」どこが悪かったのかがはっきりしづらくなり、問題解決が遅れることもあります。




俺も昔は地方へ帰る便をもらったもんヨ!
「利用運送」とは何か?
ここで「利用運送」という言葉を紹介します。
これは、自分ではトラックを持たず、他の会社に運送を任せて利益を得る業態です。
つまり、荷主から運賃をもらって、実際の運送は別の会社に依頼するというスタイルです。
これは法律で認められているやり方ですが、過度に増えすぎると多重下請けの温床になってしまいます。
利用運送そのものは悪いことではありません。
ただし、責任感のない名ばかりの利用運送業者が介在すると、業界の健全な仕組みを壊してしまうことがあります。

多重下請けは原則「2次まで」
貨物自動車運送事業法では、2025年4月1日つけで多重下請けに関係する改正が行われました。
その中には、過度な多重下請けを防ぐために、**「原則として2次下請けまで」**と定めています。
つまり、元請事業者を0次として、
荷主 → 元請 → 下請→孫請(ここまでOK)
しかし、実際は3次、4次まで存在するケースもあるのが現状です。
こうしたルールが守られない理由には、元請側の管理不足や、下請側がさらに仕事を回さざるを得ない実態もあります。

まとめ:運賃を適正にするためには
運送業界で働く人の待遇を良くするには、現場で汗を流す運送会社やドライバーに、きちんとお金が届く仕組みを作ることが大切です。
そのためには、
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✅荷主が直接実運送会社と契約する意識
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✅元請が責任を持って運賃の適正化をはかる
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✅不必要な中間業者をなくす
こういった取り組みが求められます。
多重下請け構造をなくすことが、運賃の底上げとドライバーの待遇改善への第一歩です。

