目次
― 制度と現実、その境界線を考える ―
運転手不足が続く中、
「トラックを自宅まで持ち帰ってよい」
という運送会社は珍しくなくなりました。
翌朝はそのまま荷主先へ直行。
営業所には立ち寄らない。
この直行直帰の運用は、
果たして違法なのでしょうか。
結論から言えば、
直ちに違法とは言えません。
しかし、
条件を満たしていなければ問題になります。
その違いはどこにあるのか。
整理してみます。
直行直帰は法律で禁止されているのか
営業用トラックは
営業所単位で管理されることが原則です。
根拠は
貨物自動車運送事業法
および関係法令です。
しかし近年は、
・遠隔点呼制度の拡充
・IT点呼の整備
・長距離運行への配慮
・休息期間確保の重視
といった流れが進んでいます。
そのため、
休息期間を確保できる合理的な運用であれば、
直行直帰そのものが直ちに違法とされるわけではありません。
つまり、
制度を整えた上での直行直帰は、一定程度認められる余地がある
というのが現在の実務に近い考え方です。
合法と問題運用の分かれ目
では何が問題になるのでしょうか。
境界線は明確です。
① 点呼体制が機能しているか
遠隔点呼やIT点呼を適正に実施しているか。
単なる“電話確認”で終わっていないか。
② 運行管理が実質的に行われているか
運行指示、アルコールチェック、記録管理。
形式だけになっていないか。
③ 車両管理が営業所の責任下にあるか
整備計画や日常点検が、
事実上ドライバー任せになっていないか。
④ 労務管理が整理されているか
直行直帰により拘束時間や休息期間が
曖昧になっていないか。
これらが整備されていれば、
直行直帰は制度の範囲内と言えます。
しかし――
管理を整えずに
「家まで乗って帰っていいよ」
これだけで人材を集める会社も存在します。
問題はここです。
ブラックに近い運用とは何か
本来、営業用車両は会社の管理下にあります。
にもかかわらず、
・車両保管も事実上ドライバー任せ
・点呼は形だけ
・運行指示も曖昧
・整備責任の所在が不明確
この状態で直行直帰をさせている場合、
それは「柔軟な働き方」ではなく
管理放棄に近い運用 です。
休息確保を口実にしていても、
実態が伴わなければ意味がありません。
最終的に不利益を受けるのは、
事故が起きたときの運転者です。
なぜこの問題が広がるのか
背景にあるのは人手不足です。
「通勤が楽」
「自宅にいられる時間が増える」
この条件は確かに魅力です。
しかし、
制度を整えるにはコストがかかる。
管理を強化すれば手間も増える。
その負担を避け、
“楽な採用条件”だけを前面に出す会社があるのも事実です。
ここに業界のゆがみがあります。
まとめ
トラックを家まで持ち帰る直行直帰は、
現在の制度下では一概に違法とは言えません。
しかし、
✔ 管理体制が整っているか
✔ 点呼が実質的に機能しているか
✔ 車両責任が会社にあるか
ここが整っていなければ、
極めて危うい運用になります。
本当に問われるべきなのは、
「直行直帰の可否」ではなく
会社が責任を果たしているかどうか
です。
人材確保を理由に
運行管理や車両管理をドライバー任せにする。
それは健全とは言えません。
制度を理解し、
正しく整備したうえで柔軟に運用する。
それが、
これからの運送業界に求められている姿ではないでしょうか。
