運送業界でも「週休二日制」を取り入れる会社が増えてきました。
人手不足が続く中で、働き方の見直しは避けて通れません。
ただし、現場でいざ導入しようとすると、
「祝日がある週はどうする?」
「三連休で車が止まってしまう」
という悩みも出てきます。
この記事では、運送業で週休二日制を導入する際の考え方・注意点・現実的な調整方法を解説します。
目次
なぜ、週休二日制を導入するのか?
まず、理由は大きく2つあります。
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人材確保のため
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週の法定労働時間(40時間)を守るため
最近の求職者は、「休みの多さ」で会社を選びます。
求人票に「週休二日制」と書かれているだけで応募数が増えるのは事実です。
また、労働基準法では次のように定められています。
1日の労働時間は8時間以内
つまり、週休二日制にすれば、
8時間 × 5日 = 40時間
というシンプルで法令順守しやすい勤務体系になります。
週休二日制を導入する場合の注意点
ここで最も重要なのが、**「法定休日」と「所定休日」**の違いです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 法定休日 | 労働基準法で「週に1回以上」必ず与えなければならない休日。多くの会社では日曜日。 |
| 所定休日 | 会社が就業規則などで独自に設定している休日。たとえば土曜日など。 |
この違いを整理しておくと運用がラクになります。
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法定休日(日曜):必ず休ませる義務がある(破ると法違反)
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所定休日(土曜など):会社の判断で出勤日にしても構わない(週40時間以内なら合法)
つまり、週休二日制=必ず土日休みではありません。
「法定休日を守りながら、所定休日を調整する」ことが、運送業では現実的です
週休二日制にしたいけど、祭日がある週はどうすればよい?
たとえば、月曜日が祝日の場合。
火曜〜金曜の4日勤務だと、
8時間 × 4日 = 32時間
になります。
法的には問題ありません。週40時間を超えていないからです。
ただし現場的には、
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稼働が減る
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ドライバーの給与が下がる
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配送計画が乱れる
といった問題が発生します。
このようなときは、その週の土曜日を出勤日にすることで調整が可能です。
火〜土で8時間×5日=40時間。
法定労働時間内に収まり、労基法違反にもなりません。
三連休を避けたい場合の解決策は?
祝日が月曜に来ると、
前週の土曜・日曜・月曜が三連休になります。
現場としては車が動かず、荷主対応も難しくなります。
この場合、
👉 祝日週の前週土曜を出勤日にする
という調整方法がよく使われます。
たとえば、
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11月3日(月)が祝日の場合 → 11月1日(土)を出勤日に設定
といった具合です。
これなら、三連休を避けつつ、祝日週の稼働バランスも維持できます。
1か月単位の変形労働時間制の導入
この問題を解決する方法が、1か月単位の変形労働時間制です。
この制度を導入すれば、「週ごと」ではなく「月単位」で平均40時間以内にすればよいことになります。
つまり、前週の土曜を出勤日にしてもOKという運用が可能になります。
▼ 例:2025年11月の場合
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11月3日(月)は文化の日で祝日
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前週の11月1日(土)を出勤日にして調整
こうすれば、3連休を防ぎつつ、月全体で平均40時間に収まります。
その場合の注意点
変形労働時間制を導入するには、次の手続きが必要です。
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就業規則に明記する(「1か月単位の変形労働時間制を採用する」など)
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労使協定を締結して労基署へ届出する
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勤務カレンダーを事前に作成・周知する
また、法定休日(週1日)は必ず確保する必要があります。
「週休二日制を取りたいが、週1回は必ず完全に休ませる」
ここを外すと、法違反になりますので注意が必要です。
土曜を出勤日に振り替える場合は、次の点を守ることが重要です。
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週(または変形期間)の労働時間が40時間を超えないように管理
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就業規則に「所定休日を変更する場合がある」と記載しておく
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36協定を締結しておく(時間外が発生する場合に備えて)
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労働者代表への説明・周知を徹底する
とくに「休みが減った」と感じるドライバーが出ないように、
「祝日週の代替勤務日」という位置づけをはっきり伝えることが大切です。
まとめ
- 週休二日制の導入は、人材確保と法定時間遵守のために有効
- 祝日がある週は32時間になっても問題なし
- 3連休を避けたい場合は、1か月単位の変形労働時間制を導入すれば柔軟に対応可能
- 制度導入時は、就業規則・労使協定・勤務表の3点セットを忘れずに
週休二日制の導入は一見ハードルが高そうに見えますが、制度を正しく使えば現実的に運用できます。
ドライバーにも、会社にも無理のない形を整えることが、長く続く経営につながります。
